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天神橋駒鳥シネマ vol.4

 

 

 

「なぁ、今日の放課後、いつもみたいに野球しようぜ!」

 

 

また始まった。小学5年生にもなって草野球かよ。強豪のリトルリーグとかならともかく、
試合をしても連戦連敗、どうしようもないヘボチーム。
もうお前たちと一緒に野球をやるのはうんざりだ。時間の無駄だっつーの。

 

 

「いや、オレ用事あるから」

 

そう。お前たちと違ってオレには夢があるんだ。映画監督。
将来は世界に通用するような、ビッグな監督になるんだ。
そのためにも、今は1本でも多くの映画を観て、観て、観まくってやる!

 

「よう!また来たか坊主!おまえ最近毎日のように来よるけど、ホンマ暇なやっちゃなぁ。
ガキのくせに映画ばっかり観てるとアホなるで」

 

「館長、ちょっと言い過ぎですよ。確かにうちみたいな映画館来る人はどうしようもない
暇人ばっかりですけど、この子は将来映画監督目指してるんですから」

 

 

くそ、いつもいつもこの駒鳥のオッサンはしょうもないことばっか言いやがって。
何でこんな奴が神聖な映画館の館長なんかやってんだ。
バイトの方が遥かに見込みあるじゃねーか。

 

「だからこそやねんけどなぁ。ま、わしは儲かるからええけどな。
今日もボクの生活費のために映画を観にきてくれてありがとう!」

 

 

超ムカつく!将来オレがビッグ監督になった時、へこへこ謝ってきても絶対に許さねぇからな!

 

 

「まぁまぁ、そうカッカしないで。今日の映画は館長が君のために選んだやつらしいから、
ちょっと観てやってくれない?」

 

 

あのオッサンがオレのために?まだガキだからって馬鹿にして、ゴダールとかタルコフスキーとか、

小学生が理解出来ないようなもの観させるつもりだな。上等だ。かかってきやがれ!

 

 

 

 

 

 

 

え?何この古くさいコメディは?子どもは元気に野球でもしてろってことか?馬鹿馬鹿しい。
弱小チームがコーチのお陰で生まれ変わって大奮闘?ナイナイ!
実際はあいつらのヘボチームみたいに、勝つことなんかナイ!絶対にナイ!

 

 

……でも、あいつらと一緒に野球やってた時って、勝てなかったけど、でも、こんな風に楽しかったな……。

 

「おう!くそガキ!面白かったか?」

 

 

……もしかしたら、しばらくこの映画館に来れないかも……

 

「何やおまえ、もしかして野球したなったんか?ビッグな映画監督なるために
映画観まくるんちゃうかったん?君の決意ってそんなものだったの?ププププ」
「!?ちょっと館長、小学生に対してそれはあまりにも言い過ぎじゃ……」

 

 

「大人になって『がんばれ! ベアーズ』観ても何も懐かしい思い出が込み上げてけえへん、
そんなしょーもない人生の奴が撮った映画なんか、絶対に面白いわけあれへん。
とりあえず、今はお前のおるべき場所はどこか、もう一回良く考えてみ?」

 

 

ちくしょー!ただでさえ客なんかいてないくせに、常連のオレが来なくなって潰れても知らねーぞ!
とりあえず、ちょっと寄道してくるけど、そのうちビッグな監督なって戻ってくるんで、
それまでこの映画館潰すなよ!

 

 

「走っていきましたよ。子どもはうらやましい。館長もたまにはいいこと言うんですね。」

 

 

「しまったー!これから夏休みやし、こう言うたらあいつ意地になって、
休み中は毎日映画観に来る思ったのにー!また売上が減ったやんけー!」

 

 

……やっぱり駒鳥サンは相変わらずです。

 

 

 

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【今月の上映作品】

 

「がんばれ! ベアーズ」(1976)

監督:マイケル・リッチー
主演:ウォルター・マッソー、テータム・オニール 上映時間:102分

問題児ばかり抱えた弱小チーム「ベアーズ」に、おかしなふたりのひとり、
ウォルター・マッソー演じる飲んだくれの監督が、チームを変えていき、
やがて強敵に打ち勝つ……そう、定番のスポ根コメディ。
でも、今観るとほんわかした空気感が心地よい佳作。テータム・オニールかわいい。

 

 

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【登場人物紹介】

 

駒鳥サン……天神橋の片隅にある(かもしれない)架空の映画館、「天神橋駒鳥シネマ」の館長。
お人好しで涙もろく、でもちょっぴりおっちょこちょいな、如何にもナニワな感じの所謂おっちゃん。
どう考えても映画が好きなようには見えない。

 

 

バイトくん……いつも人騒がせな支配人に対し、常に冷静でクールなアルバイト。
おそらく学生。態度には出さないものの、「天神橋駒鳥シネマ」のバイトを結構気に入っている。

 

 

 

小学生……何故映画監督を目指すのかよくわからない5年生。でも運動神経抜群。早生まれ。

 

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【執筆者紹介】

村上 淳一

コーヒー淹れたりイベントやったりモノ書いたり喋ったり。

でも本当は駒鳥文庫という映画関連古書店の店主、だったような。

 

http://komadori-books.jp

http://komadori-shimaiten.jp

 

Twitter:@komadoribooks

 

FM802 〝BEAT EXPO〟の「水曜エキスポ映画部」にも映画部員として出演中。

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